省力化投資補助金(一般型)第8回|「装置を替えない自動化」は公募要領でどこまで対象か

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省力化投資補助金(一般型)第8回|「装置を替えない自動化」は公募要領でどこまで対象か

「今の装置はそのままで、センサーと仕組みを足して自動化する。それなら省力化投資補助金が使える」。つまずくのは「装置はそのまま」の部分ではありません。「足す」作業のどこまでが補助に載るか、です。第8回(一般型)の公募要領を通読すると、補助の線は「今ある装置」と「新しく入れる仕組み」の間に引かれている。既存の設備に対...

「今の装置はそのままで、センサーと仕組みを足して自動化する。それなら省力化投資補助金が使える」。つまずくのは「装置はそのまま」の部分ではありません。「足す」作業のどこまでが補助に載るか、です。第8回(一般型)の公募要領を通読すると、補助の線は「今ある装置」と「新しく入れる仕組み」の間に引かれている。既存の設備に対する作業費は対象外で、新しく導入するシステムと連携させるための既存システムの改修費は対象です。申請の締切は10月16日(金)17:00。


30秒でわかる省力化投資補助金(一般型)第8回

項目内容
ひとことで人手不足に悩む中小企業等が、IoT・ロボット等のデジタル技術を使った専用設備(公募要領の用語で「オーダーメイド設備」)を入れる経費の一部を補助する、中小機構の事業
工場での意味装置を入れ替えなくても申請の道はある。見るべきは、構成図から「新しく置くもの」を切り出せるかどうか
日程公募開始2026年8月18日/申請受付開始9月18日10:00/締切10月16日17:00/採択発表2027年2月上旬(予定)
お金の枠補助上限は従業員数の区分ごとに決まり、5人以下750万円から101人以上8,000万円まで(大幅賃上げの特例で引き上げあり)。補助率は中小企業1/2(特例あり)、小規模企業者・小規模事業者と再生事業者は2/3
外せない条件単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が1つ以上。汎用設備の単体導入は対象外
引き換えに約束すること3~5年の事業計画で、労働生産性の年平均成長率+4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上、事業場内最低賃金を事業実施都道府県の最低賃金+30円以上にする(給与と事業場内最低賃金の要件には、未達時の返還規定がある)
本稿で扱わないこと個別案件の採否。個々の設備や経費が対象になるかは、採択後の交付申請で事務局が改めて審査して決まる

「装置を替えないと出ない」も「後付けなら何でも出る」も外れている

公募要領が問うのは、装置を替えるかどうかではありません。新しく何を導入するかです。

入口の条件の一つは、経費の側にあります。機械装置・システム構築費は必須の経費で、「必ず1つ以上、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必要」。もう一つは、導入するものが「オーダーメイド設備」であることです。要領の定義はこうです。

「ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等を活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するために、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携などを通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステム(ロボットシステム等)」

中小機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第8回公募)」1-2 定義

この定義に、装置を新品に替えるという条件は入っていません。センサーを使い、生産工程の自動化のためにSIerと組んで自社専用に設計したシステムは、定義の文言にそのまま収まります。

反対側の誤解もあります。市販のカメラやパソコンを買って並べれば通る、という読み方です。要領の答えは「単に汎用設備を単体で導入する事業については、本事業の対象とはなりません」。汎用設備でも、導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能が変わる場合は、オーダーメイド設備と「みなし」て対象になります。組み合わせて導入し、より高い省力化効果や付加価値を生み出せる場合も同じです。分かれ目は、市販品かどうかではない。自社の工程に合わせて組み上げたかどうかです。


工場の言葉で言い換えると:補助の線は装置の外側に引かれている

線の位置を決める条文は、補助対象経費(3-1)と補助対象外経費(3-2)に分かれて置かれています。片方だけを読むと、線を見誤ります。

該当する三か所は次の通りです。

条文原文工場で読むと
3-2 補助対象外経費「過去に購入した設備に対する作業費用や補助対象経費となっていない設備に対する費用」今ある装置を開けて手を入れる作業費は、補助の外
3-2 補助対象外経費「既に導入されている既存システムやソフトウェアのバージョンアップ・アップデートの費用・改修費用」
「※補助事業にて新規に開発・導入するシステムと連携するための改修費用は対象となります。」
既存MESを更新するだけなら外。新しく入れる収集・判定システムと繋ぐための改修なら中
3-1 機械装置・システム構築費「改良」は「本事業で新たに購入する機械装置・システムの機能を高める又は耐久性を増すために行うもの」、「据付け」は「本事業で新たに購入する機械装置の設置と一体で捉えられる軽微なもの(設置場所に固定等)」改良の相手は新しく買った機械装置・システム、据付けの相手は新しく買った機械装置。設置場所の整備工事や基礎工事は含まない

「装置を替えない自動化」が補助事業として組めるかどうかは、装置を替えるか否かでは決まりません。本質は、既存の装置の外側に何を新しく置くのかを、構成図の上で切り出せるかどうかにある。切り出せない計画は、採択のあとで困ります。採択は、計画書に書いた補助対象経費の全額について交付を確定するものではありません。対象外経費が含まれていれば、交付決定額は「減額又は全額対象外」となり得ます。


よくある構成図に当てはめる

多くの構成で、分かれ目は見積の行を「既存の装置に触る作業」と「新しく置くもの」に分けられるかです。ここから先は公募要領の文言を工場の構成に当てはめた読み方で、最終的な対象可否は交付申請時の審査で決まります。

通信口のない古い装置の横に、収集と判定の箱を置く

通信機能を持たない装置の外側に、新しい機器を置きます。電流センサーや表示灯を監視する機器、収集用の端末、判定ソフト。SIerが自社の工程向けに組み上げ、装置本体には触らない構成です。新しく買う機器とシステムの構築は、機械装置・システム構築費の候補になります。新たに購入した機器の設置と一体の軽微な据付けも、同じ区分に入っています。

装置に触る作業が混ざると、話は別です。盤を開けて配線を変えるようなハードウェアの作業は、「過去に購入した設備に対する作業費用」に当たると読めます。その見積は、補助の外として分けておくのが安全です。

既存装置の制御プログラムを書き換える場合は、要領の文言だけでは決まりません。3-2には「既存システムやソフトウェアの…改修費用」が対象外として並び、同じ項目の※書きが「補助事業にて新規に開発・導入するシステムと連携するための改修費用は対象となります。」と続くからです。どちらに当たるかは交付申請時の審査で判断されます。計画の段階で、事務局に確かめておく価値がある。

機器選びにも落とし穴があります。事務用のパソコン、タブレット端末、カメラ。どれも補助対象外経費の「汎用性があり、目的外使用になり得るもの」の例に入っています(「本事業でのみ使用が可能なもの」は除く)。監視専用に組み込むのか、事務にも使える形で置くのか。構成の段階で説明できるようにしてください。

通信口のない装置をどう分類して繋ぐかは、SECS/GEM非対応の装置を三列に分けてMESに繋ぐ記事で整理しました。今回の条文と重ねて読むと、見積をどこで切り分けるかの見当をつけやすくなります。

既存のMESや生産管理システムに「受け口」を開ける

新しい収集システムのデータを既存のMESに渡すため、MES側にインターフェースを足す。要領の※書き「補助事業にて新規に開発・導入するシステムと連携するための改修費用」に、そのまま当たる形です。

同じ機会にMESのバージョンも上げるなら、その費用は同じ項目の本文にある「バージョンアップ・アップデートの費用」の側に入り、対象外です。見積書では、連携のための改修と、ついでの更新を別の行に分けてもらう。社内の情報システム担当が自分たちで改修する場合、その人件費は計上できません。

市販のカメラとAIソフトを買ってきて、そのまま置く

パッケージのまま入れるだけなら、1-7の「汎用設備、パッケージソフト等のオーダーメイド性の無い設備・システムを単体で導入する事業」に当たります。同じ項目には、複数組み合わせてより高い省力化効果や付加価値を生み出す場合は対象になる、という但し書きが付いています。

要領が最初のほうに置いた注意の一つは、一般型を検討する前にカタログ注文型の製品カタログを「必ず確認してください」というものです。カタログに載った製品を環境に合わせて変えずにそのまま入れる計画は、一般型の対象にならない。申請が「迅速かつ簡易」なのは、カタログ注文型のほうです。


書類と審査で問われるのは、線の引き方の説明

技術面の審査は「省力化指数や投資回収期間、付加価値額、オーダーメイド設備の4つの観点」で行われます。システムを組む案件は、口頭審査で社内の人間が説明する場面まで想定に入れてください。

省力化指数は、設備導入で削減される業務に要していた時間と、導入後に発生する業務に要する時間から計算します。その数字は、今の現場の作業時間を測るところから出てきます。削減したい作業の所要時間を測っていない工場は、式が埋まらない。

見積にも注文がつきます。システム構築費には「積算根拠が明確な見積書及び仕様書」が必要です。「システム開発一式」のような見積は認められません。発注先1件あたりの見積額の合計が50万円(税抜き)以上なら、同一条件での相見積もりが原則になります(採択後の交付申請の手続き)。

保守の扱いも先に決まっています。システム構築費を計上するなら、発注先と事業計画期間内の保守・メンテナンス契約を結ぶことになっており、その保守費用は補助対象外です。

口頭審査の席に、SIerは座れません。対象は、ソフトウェア投資やシステム開発など、書面では計画の詳細を正確に理解しにくい案件が中心です。一定の基準で事業者を選び、必要に応じてオンラインで行われます。所要時間は1事業者30分程度の予定。対応するのは申請事業者自身です。同席は、役員または従業員のうち申請時に申請担当者欄に記載した者1名まで。事業計画書作成支援者、経営コンサルタント、社外顧問等の同席は「一切認めません」。

「事業計画は申請者自身で作成してください」。これも要領の冒頭の注意で、作成を支援した者がいれば、名称と報酬額を申請画面に記載する必要があります。既存と新規の境目を、工場の人間が自分の言葉で説明できるか。審査の仕組みは、そこを確かめる作りです。


熊本の事業者へ:「審査において配慮」の一文を読む

令和8年熊本地震の被害を受けた熊本県内の事業者について、中小機構の8月18日の発表文には「審査において配慮いたします」とあります。ところが、第8回の公募要領PDFには「熊本」「地震」という語が一度も出てきません。配慮の中身は、要領からは読み取れない。

要領の政策面の審査項目には、「地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業」かどうかという観点があります。これが発表文の「配慮」の運用を指すのかは、発表文にも要領にも記載がありません。加点や優先採択と受け取るのは早すぎます。

被害を受けた事業者にできるのは、被害の状況と今回の省力化投資の関係を、計画書の中で具体的に書くことです。配慮の扱いそのものは、中小企業省力化投資補助事業コールセンター(ナビダイヤル0570-099-660)で確認するのが確実です。


10月16日17:00までに、工場側でやっておくこと

補助金の書類より先に、構成図を塗り分ける。

  • GビズIDプライムの有無を確かめる:申請に必須。発表文・要領とも、取得には一定の期間を要するとしている
  • カタログ注文型の製品カタログを引く:入れたい機器がそのまま載っているならカタログ注文型、環境に合わせて組むなら一般型
  • 構成図を三色に塗る:既存で触らないもの、新しく買うもの、新規システムと繋ぐために既存システム側を改修するもの。既存装置への作業が混ざる箇所は別の行に分け、判断がつかないものは事務局に確認する
  • 単価50万円(税抜)以上の機械装置・システム等をどれにするか決める:単価の安いセンサーを並べる構成なら、この条件をどの機器・システムで満たすかを先に決めておく
  • 削減したい作業の所要時間を測り始める:省力化指数の計算で、削減される業務に要していた時間として使う数字になる
  • SIerへの見積依頼を「一式」にしない:連携のための改修と既存システムの更新を別行に。保守・メンテナンス契約の範囲もこの段階で話しておく
  • 発注は交付決定の後:交付決定前の経費は「いかなる理由であっても事前着手は認められません」
  • 口頭審査に誰が出るかを決める:対応は申請事業者自身、同席は申請担当者欄に記載する役員または従業員1名まで
  • 第7回に応募して結果待ちの会社は、事務局に確認する:スケジュールページには「本事業へ応募申請・交付申請中の事業者」は申請できないとあり、第7回の採択発表は2026年11月中旬(予定)で、第8回の締切より後になる

「装置を替えない」は予算の話に聞こえます。この公募要領の上では、設計の話だ。今ある装置を補助の外に置いたまま、その外側に何を足すのか。その線を引けた工場から、計画書は書き始められます。


参考資料

T&C

techandchips

techandchipsは、今ある装置とシステムを活かす工場自動化で熊本半導体クラスターの製造業を支えています。装置・システム連携(EAP/MES)、見える化・予知保全、トレーサビリティ、AI文書自動化まで一貫して対応します。

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