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ローム・東芝・三菱電機「1兆円連合」— デンソーの"黒船"が動かした、パワー半導体の地殻変動

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ローム・東芝・三菱電機「1兆円連合」— デンソーの"黒船"が動かした、パワー半導体の地殻変動

3月27日、ローム、東芝、三菱電機の3社がパワー半導体事業の経営統合に向けた基本合意書を締結した。JIP(Japan Industrial Partners)とTBJ Holdingsも参画する。 合算売上は 1兆円超 。世界シェア約11.3%で、onsemi(7.9%)を抜き 世界2位 の連合体が生まれる。首位Inf...

3月27日、ローム、東芝、三菱電機の3社がパワー半導体事業の経営統合に向けた基本合意書を締結した。JIP(Japan Industrial Partners)とTBJ Holdingsも参画する。

合算売上は1兆円超。世界シェア約11.3%で、onsemi(7.9%)を抜き世界2位の連合体が生まれる。首位Infineon(18.5%)の背中が見える位置だ。

だが、この合意には表には出にくい「起爆剤」がある。

デンソーが投げ込んだ「黒船」

3月6日、デンソーがロームに対して株式取得提案を行った。規模は約1.3兆円。自動車Tier1最大手が、パワー半導体メーカーを丸ごと取り込もうとした。

ロームの東清一郎社長は、これを「黒船襲来」と表現した。

デンソーの狙いは明確だ。EV用パワー半導体の内製化である。SiCインバータはEVの航続距離を左右する中核部品であり、その供給元を自社の傘下に収めたかった。

だがロームにとって、Tier1の子会社になることは「顧客が限定される」ことを意味する。デンソー以外の自動車メーカーが、デンソー子会社のロームからチップを買い続けるだろうか。

この危機感が、競合3社を一つのテーブルにつかせた。

噛み合う三枚のカード

この統合が注目される理由は、3社の技術ポートフォリオがほとんど重複しないことにある。

ロームはSiC(炭化ケイ素)とGaN(窒化ガリウム)の化合物半導体に強い。次世代パワーデバイスの本命と言われる領域だ。SiCウェハからデバイスまで垂直統合で持っている。売上4,800億円。

東芝デバイス&ストレージはシリコンMOSFETで国内トップクラス。産業機器、家電、電源など幅広いアプリケーションをカバーする。売上4,454億円。

三菱電機のパワーデバイス事業は、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)とパワーモジュールが柱だ。鉄道、産業用インバータ、再エネ向けに強固な顧客基盤を持つ。売上2,900億円。

SiC/GaN、Si MOSFET、IGBT/モジュール——三つの技術が一つの傘の下に入ることで、EV・産業・再エネ・AIの全領域をカバーできるパワー半導体プラットフォームが完成する。Infineonが一社でやっていることを、日本は三社連合で実現しようとしている。

熊本で重なり始めた二つの生態系

この話は、熊本と無関係ではない。

三菱電機は菊池市に約1,000億円を投じてSiCパワー半導体の新工場を建設中だ。2026年4月に着工し、EV・産業向けSiCチップの量産拠点になる。

そして菊池市は、JASM(TSMC熊本工場)から車で30分の距離にある。

デンソーはJASMの出資者でもある(持分5.5%)。つまり、デンソーのTOB提案からロームの「黒船」発言、3社統合、三菱電機の菊池市新工場——これらが一本の線でつながっている。

熊本ではこれまでロジック半導体(JASM/TSMC)のエコシステムが急速に形成されてきた。SUMCO佐賀のシリコンウェハ、TEL合志の製造装置、ソニー合志のイメージセンサー。

そこに今、パワー半導体のエコシステムが重なり始めている。三菱電機のSiC工場はその象徴だ。一つの地域にロジックとパワーの両方が集まる——これは台湾の新竹や韓国の平沢にもない特徴になりうる。

「ロジックはTSMC、パワーは自前」という戦略

少し引いて見ると、日本の半導体戦略の輪郭が浮かぶ。

先端ロジック(3nm以下)はTSMCとRapidusに任せる。自国だけでは追いつけない領域だ。だがパワー半導体は違う。日本勢が世界シェア上位に食い込んでいる数少ない分野であり、SiC/GaNという次世代技術でも先行している。

EV、AIデータセンターの電力管理、再生可能エネルギーのインバータ——パワー半導体の需要は2030年に向けて年率8-10%で成長すると予測されている。

世界のパワー半導体市場は2025年の約260億ドルから、2030年に400億ドル超へ。SiCデバイスだけで100億ドル規模に達する見通しだ。 — Yole Group, 2026

この市場で、ロームも東芝も三菱電機も単独ではInfineonに勝てなかった。だが1兆円連合なら話が変わる。研究開発費を集約し、SiCウェハの調達力を束ね、顧客に対して「何でも揃う」ワンストップを提供できる。

デンソーの「黒船」は、結果的に日本のパワー半導体を一つにまとめる触媒になった。狙ったものとは違う形で、日本の半導体産業を動かしたことになる。

参考資料

T&C

techandchips

techandchips provides AI solutions for manufacturers in the Kumamoto semiconductor cluster. We support equipment monitoring, predictive maintenance, and traceability for TSMC supply chain compliance.

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